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日々ごはんを食べるように活字を食べて生きています。

村上春樹『騎士団長殺し』感想(ネタバレなし)

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久々の村上春樹さんの長編、先日読了しましたので簡単に感想をば。とりあえずネタバレなしで書いて、また今度時間があったら、ネタバレありを書きたいと思います。

 

前回の長編『1Q84』は、村上春樹らしくないところ多々あり、それが魅力的だという読者もたくさんいると思います。僕には正直言うと、苦手な部類に入る作品でした。それに対して本作は、徹頭徹尾村上春樹的テイストが溢れんばかりに湧き出しています。冒頭(ぐらいはネタバレしていいでしょう)の主人公の一連の言動、主人公の妻が「別れたい」って言い出すんですが、その理由とか、その後に主人公がとったリアクションとか、これほどまでに100%村上春樹的なシチュエーションはないのではないかというくらいにハマってます。

 

過去の作品のいろいろな、(しかもお馴染みの)モチーフが、これでもかというくらいに詰め込まれていて、どこを切っても村上春樹という金太郎飴のような作品です。それでいて、緻密に計算された言葉や文章の繋がり、ここぞという時に炸裂するお馴染みの村上春樹的フレーズの数々は、僕ら読者の心を鷲掴みにし、ページを繰る勢いは増すばかり。話の展開は結構ゆっくりなんですが、この「読ませる」筆力の凄さは相変わらずだと思いました。

 

読後感も悪くないです。個人的には僕の大好きな短編『蜂蜜パイ』を想起させるような感じもあります。相変わらずの性描写もありますが、食事と飲酒、特にウイスキーを飲む描写が冴え渡ってます。いつも思いますが、村上春樹作品では、性欲と食欲と睡眠欲は等価なんです。あと、もう一人の主人公とも言えるメンシキさんのキャラがすごく立ってます。

 

久々に濃密な読書体験をさせてもらいました。

個人的にはかなりおすすめですが、過去作品をある程度読んでいるのとそうでないのとでは、受ける印象がかなり異なってくると思います。