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日々ごはんを食べるように活字を食べて生きています。

お正月は美術館へ:クラーナハ展とデトロイト美術館展

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遅ればせながら、あけましておめでとうございます。本年もどうぞよろしくお願いいたします。

お正月ですが、家族で出かけるというとやっぱり神社仏閣への初詣が多いんじゃないでしょうか。我が家は今年は美術館に行ってきました。上野は国立西洋美術館の「クラーナハ展」と上野の森美術館の「デトロイト美術館展」です。どちらも今月中に終わってしまうので、前から行きたいと思っていた僕にはちょうど良いタイミングでした。我が家で出かけたのは1月2日だったのですが、どうも元旦からやっているらしいです。普段だと土日は結構混み合う美術館ですが、初詣や帰省で人出が分散しているのでしょう、そんなに混雑しておらず、割と余裕を持って見ることができました。

クラーナハは一般的にはマルティン・ルター肖像画で有名な人です。でも彼の革新性は女性の裸体を、従来のキリスト教絵画の枠組みの中で描くのではなく、背景黒一色みたいなところに裸体だけ描くという、きっと当時は大変センセーショナルなことを始めたことにあるようです。彼の描く裸体は後のルノワールのような豊満さはなく、比較的スリムなんだけど、なんだか妙に肉感的なところがあり、体の一部や顔に透明なヴェールがかかっていたりしているところが却ってエロティックだったりします。当時は貴族の依頼で絵を描いて収入を得たりしたでしょうから、こっそり眺める用の、江戸の春画のような役割を担っていたのかもしれません。それから、写真にもあるユディットのような女傑や悪女モチーフの絵画、また当時の王侯貴族を描いた肖像画に見られる衣装や装飾品、髪の毛の表現の恐るべき繊細さと緻密さ、その表情のアンニュイで複雑な感じは凄いの一言です。また、版画も多く展示されていて、これまた興味深く鑑賞しました。ただ、やや暗めの館内では、版画の細かい部分はなかなか目を凝らしても見るのが厳しいものもあり、こういうのは図録(買いました。2600円にしては素晴らしく内容充実しています)で見るのが良いようです。何れにしてもこれだけきちんとキュレーションされた企画展はあまりないので、あと一週間ぐらいしか期間が残っていませんが、興味のある方は足を運ばれて損はありません。

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さて、美術展のはしごなんて初めてやったんですが、上野の森美術館でやっているデトロイト美術館展にも行ってきました。こちらは日本人にも馴染みの深い、ゴッホセザンヌ、モネ、ルノワールモディリアーニマティスピカソといった印象派以降の有名どころがずらりと並ぶ、なかなか壮観な展示でした。面白かったのはフラッシュ無しでの写真撮影OK(曜日が決まっているようでしたが)、SNSなどへの投稿も一部の作品を除いてOKになっているところ。ちなみに上の適当に作ったコラージュは全て投稿OKのものです。これはなかなか良い取り組みだと思います。今やSNS経由の口コミこそマーケティングの主流の一つとも言えるので、知り合いが「この絵がすごくよかった!」と写真付きでツイッターフェイスブックに投稿していると、じゃあちょっと行ってみようかという気分になりますよね。もちろんイマイチな点もあり、シャッター音があちこちで聞こえること(僕はシャッター音がしないOneCamというアプリを使っていました)、撮影目的でやたらと長く絵の前に陣取ってしまう人がいたりするのはちょっとどうかなとも思いましたが。

鑑賞の後は、駅の近くの一蘭(有名な博多ラーメンのチェーン店)に行きましたが、こっちの方が美術館のチケット売り場より断然長い行列ができてましたね。

正月の美術館巡りというのは何れにしても、普段より時間的に余裕があり、混雑もあまりないという観点からも結構良いのではと思います。我が家は正月は炬燵でひたすらテレビ番組を見る習慣はないので(そのせいで箱根駅伝もいつも見られないのですが)、また来年も行くかもしれません。